なだらかな坂の途中に位置する当店から
しばらく下ったあたりに、その川はある
『誰のライブだったら行きますか?』
音楽好きのお客さんより
そんな質問を受けたことがある
この質問には前提があって
人一倍出不精な私が
店を休んでまでして行くとしたら誰か、
という意味である
優柔不断な私だが
この質問にはきっぱり答えることができた
『ブルース・スプリングスティーン』。
すると先ほどの音楽好きのお客さんの、
行きつけのバーのマスターが
スプリングスティーン好きだということが判明した
店名を聞くと
いろんなお客さんから聞いてるお店だった
夥しい枚数のレコードと
店内を圧倒するスピーカーが特徴のバーらしい
いつか都合が合えば、
そんな感じでしばらく過ぎた先日、
またまた先ほどの音楽好きのお客さんがお見えになったので
そのバーの話を振ると
なんと年内で閉店するとのことだった
その上で、
今日今から行きますか?なんてお誘いを受けた
当店の閉店時間は過ぎていたが
片付けはそのまま残っている
1時間半はかかる
でも、これはチャンスだと思った
片付けは後だ、とにかくその店に行こう
シックな店内には聞いた通り、
夥しい枚数のレコードがあり、
圧倒的なスピーカーがあった
東京で長くバーを営んでいたそうだ
スプリングスティーンの話をすると
やはりファンの方だった
お店の名前ももちろん、
そこからとったらしい
年齢も似通っており
映画や音楽の話にも花が咲いた
店内ではスプリングスティーンだけでなく、
佐野元春も多く流れた
スプリングスティーン好きは
大概佐野元春好きでもある
至福の時間だった
その後更に夜が深まると
我々世代には懐かしい歌謡曲達が流れた
いつまでも古びない、
確かにそう思うが
圧倒的な音響システムで聴くと
大概の曲は質の良い曲に聴こえるのかもしれない
さて、時計は見てないが
恐ろしい時間になっているはず
また必ずと席を辞して店に帰った
片づけを終わらせて家に帰り、
2時間ほど寝てまた店に向かった
いい酒だったからかあまり酒は残ってない、
ってそんなに世の中甘くない
昼を過ぎた辺りから急にしんどくなった
つまり朝はまだ、酔ってたわけだ
スプリングスティーンの『RIVER』で乗り切ることにした